授業紹介

プロジェクト基礎演習(文化資源マネジメントコース)

多様な地域文化にふれ、文化の発掘・保存・活用を学ぶ。

授業の目的と概要

文化資源マネジメントコースが開講する「プロジェクト基礎演習」は、現地でのフィールドワークを通して、文化資源の発見や継承・活用、課題解決等に向けた基礎的な手法や考え方について学ぶことを目的としています。受講生は、複数のフィールドワークサテライト(研究対象地域)から関心に応じて1つを選択し、それぞれの担当教員のもとで、対象地域の特色ある文化資源について調査します。

本講義は、大きく分けて4つのプロセス(①事前学習、②現地調査、③事後学習、④成果発表)を通して学びます。事前学習では、サテライト単位で、現地に関する資料(史料)収集、文献輪読、データー整理など、調査の事前準備を行います。現地調査を実施した後は、事後学習として、収集した資料の整理や聞き取り調査のまとめ、保護・保存・活用に向けた検討を行います。これらの最終成果は、各サテライトの調査結果として発表会で報告し、受講生は互いの調査結果を通して、愛媛県内の多様な文化実践について学びます。2017年度に実施した4つのフィールドワークサテライトでの活動内容を以下のとおり紹介します。

内子町小田の民具に関する文化調査と活用の可能性(担当:井口梓)

民具とは、日常生活で使われる道具や用具を指します。内子町では、旧小田郷土資料館(閉館)に収蔵されている民具を対象に、地域の生活文化を記録・収集し、活用の可能性を検討しました。現地では、地元関係者と連携しながら、林業や山仕事の道具、調理道具、行事で使用する御膳や器など、小田の産業と暮らしを取り巻く様々な道具について、写真やビデオで撮影して、その記録作業に取り組みました。また、古い道具や古写真を用いながら使用者を対象に当時の産業や暮らしについて聞き取り調査を行いました。その成果は模造紙にまとめて発表し、民具の体験展示について検討しました。

内子町の文化資源に関する調査と活用の検討(担当:寺谷亮司)

内子町の様々な文化資源の中から、学生の関心に合わせてテーマ設定し、調査研究を行いました。具体的には、八日町護国重要伝統的建造物群保存地区の町並み保存活動と観光施設の取り組みや小田地区の農家や観光農園の経営、及び道の駅せせらぎの商品開発、石畳地区のまちづくりと飲食文化、酒蔵産業の展開と内子町の酒文化の4つのテーマについて調査を実施しました。学生は、調査期間の4日間のうち、いずれかの日を主担当日として、聞き取り調査の内容など事前に調査準備を行い、現地の調査後には、各テーマの調査内容や検討結果をレポートにしてまとめました。

上島町の製塩遺跡に関する発掘調査と活用の検討(担当:村上恭通・槙林啓介・淡野寧彦)

上島町が実施している「歴史総合調査事業」と協調しながら、塩業に関わる文化遺産の調査を実施しました。現地では、上島町教育委員会での文化遺産の発掘・保存に対する取組みについて聞き取り調査を実施し、佐島に位置する宮ノ浦製塩遺跡の発掘調査に参加しました。また、弓削島では、「弓削の荘」や「しまの会社」「しまでcafé」など歴史文化を活用した地域振興事例について調査しました。これら上島町で学んだ製塩遺跡や、移籍に関わる文化資源マネジメントのスキルや専門知識を活かしつつ、瀬戸内圏域における近世・近代の製塩業の分布や動向、全国における自家製塩について調べ、研究を深めました。

八幡浜市の文化資源に関する調査と商品企画の検討(担当:大谷尚之)

八幡浜市では、農業や漁業、6次産業化の取り組みなど地域の現状と課題を調査したうえで、みなと湯の事業や商店街を調査しました。とくに、商店街では、みなと湯のモール泉の黒さを活かした「黒い商店街」「ブラックリスト(商店リスト)」の事業について聞き取り調査を実施しました。また「八幡浜みなっと」にて、みなと交流館やどーや市場、どーや食堂、アゴラマルシェの事業内容について聞き取り調査を実施しました。これらの調査を踏まえ、八幡浜の水産資源を活かした魚肉八幡浜ソーセージの商品開発に参加し、学生の視点から地域資源を活かした商品パッケージ等の企画提案を行いました。