研究紹介

鉄道黎明期の愛媛県

  • 教員: 山口 由等
  • 学科:
  • キーワード: 近代化遺産、記憶遺産、地域経済史、産業観光

四国・愛媛と鉄道

北海道新幹線が2016年に開業したことで、日本の主要四島の中で新幹線が無いのは四国だけになりました。その一方で、電車が無くディーゼル鉄道だけの徳島県など四国は多くのディーゼルカーが運行されていて、他とは違うユニークな鉄道網を持っています。その中でも愛媛県は「新幹線生みの親」・十河信二と「近鉄中興の祖」・佐伯勇を輩出した地域でもあり、これに2016年に松山市に胸像が作られた「坊ちゃん列車生みの親」・小林信近を合わせた3人は「愛媛の鉄道三偉人」といってよいでしょう。さらに、伊予鉄道は日本で2番目に古い私鉄で、戦前に地方小鉄道として盛んに作られた軽便鉄道の草分けの会社であり、愛媛県の鉄道の歴史は決して短いものではありません。

鉄道黎明期の研究

とはいえ、愛媛県の幹線鉄道建設が他県よりも遅れたのも事実で、松山市は沖縄県の那覇市を除く県庁所在地の中で最後に官営鉄道が敷かれたところです。そのため、愛媛県の人びとは官営鉄道の建設促進や、民間鉄道の設立などの動きをくり返し続けてきました。古書及び愛媛県内や東京に残された古文書を研究すると、人びとがどのように鉄道を愛媛県に作ろうとしたのか、どのように挫折したのか、あるいは南予地方ではどのように鉄道建設を実現したのかなどが明らかになります。

産業遺産としての鉄道史

こうした歴史的研究をする意味は2つあります。ひとつは、世界遺産入りした富岡製糸場や軍艦島のように、地域創生の一端を担う産業観光の発展を進めることです。とくに西条市の四国鉄道文化館・西条図書館には、歴史的な鉄道車両などの展示のほか、旧国鉄時代の経営資料(十河信二文書)、鉄道書籍や日本有数の鉄道グッズコレクションなどがあります。また、松山市でも伊予鉄道が坊ちゃん列車(レプリカ)を運行したり、坊ちゃん列車ミュージアムを開館するなど、鉄道史を観光資源とする動きが盛んです。研究のもうひとつの意味は、人びとの鉄道に対する関心を高めるような話題を提供し、新幹線誘致などの運動と連携することです。いずれも、大きな貢献が直接できるわけではありませんが、関連する多様な地域の活動の一端を担うことができればと考えています。