授業紹介
プロジェクト基礎演習(農山漁村マネジメントコース)
- 学科: 地域資源マネジメント学科
- 学年: 2年次
- 教員: 竹島 久美子、笠松 浩樹、山藤 篤、石川 慶一郎
- 科目群:実践力育成科目群
授業の目的と内容
農山漁村において実践型プロジェクトを企画・運営し、その成果をもとにPDCAサイクルを行います。この体験を通して、学生は地域社会での企画力、実践力、コミュニケーション力を身に付け、自身のキャリアアップにつなげることができます。
農山漁村マネジメントコースでは、4人の教員が分担して下記のプロジェクトを企画しています。学生はいずれかを選択し、「プロジェクト基礎演習」(2年次第3Q)、「プロジェクト実践演習」(3年次第2Q)、「プロジェクト応用演習」(3年次第3Q)を通して一貫性のある展開に携わります。
テーマと担当教員
「農産物マーケティング比較:農産物流通の仕組みを学ぶ(A班:卸売市場流通)」
担当:香月敏孝
「農産物マーケティング比較:農産物流通の仕組みを学ぶ(B班:市場外流通)」
担当:山藤篤
「ネイチャー・アスレチックランドの整備」
担当:小田清隆
「久万高原町面河地区における『地域運営協議会』設立のための調査・検討」
担当:笠松浩樹
実践例:「地域運営協議会」の設立に関わる
久万高原町面河地区の概要
4つのプロジェクトの中から、今回は「久万高原町面河地区における『地域運営協議会』設立のための調査・検討」を紹介します。
面河地区は、愛媛県内でも過疎・高齢化が最も進んでいる地区です。さらに、平成の大合併によって、2004年に面河村から久万高原町の一部となり、行政サービスの低下や予算の削減が懸念されてきました。このような状況に対応するため、住民が自分達の暮らしを自主的に考え、活動を企画し、実践していくための組織「地域運営協議会」の設立が模索されています。2017年度はそのための準備会を住民有志14名で設立し、設立の検討を行っているところです。
本科目では、「面河地区地域運営協議会設立準備会」(以下「準備会」)とともに活動し、その中で実施していく調査・検討に関わることとしました。
演習の経過
準備会は2017年度に1年間をかけて実施されていますが、本科目が実施される第3クォーターでの関わりは限定的なものになります。この期間に、次の活動を行いました。
2017年10月25日(水) 面河住民センターにて
面河地区地域運営協議会設立準備会に参加
2017年11月20日(月) 面河保育所跡地にて
交通部会に参加
2017年11月29日(水) 大学にて
交通空白地帯調査の調査票作成
2017年11月30日(木) 面河住民センターにて
面河地区地域運営協議会設立準備会に参加
2017年12月 5日 (火) 面河地区にて
交通空白地帯調査実施
2017年12月14日(木) 面河住民センターにて
面河地区地域運営協議会設立準備会に参加
今回は準備会全体との関わりも持ちながら、主に交通部会で実施した交通空白地帯の調査を担いました。
面河地区では、バスなどの公共交通機関のない場所があり、そこにも独居者や高齢者のみの世帯があります。中には自家用車を所有していない方もおり、買い物や通院をどのように行っているのかの生活実態と、交通を支援する取り組みがあれば利用するかどうかの意向を調べることとしました。
地区の状況を準備会の際に伺ったうえで、準備会の下部組織である交通部会に参加し、具体的な調査内容について詰めました。それをもとに、学生が具体的な調査票を作成しました。この調査票に基づき、交通部会に属する住民の方々と手分けをして聞き取り調査を行いました。
合計で38件の高齢者世帯が交通空白地帯にあり、そのうち河の子集落を本コースの学生が調査しました。
調査を経て -河の子集落の様子-
訪問した集落は、最寄りのバス停から3km以上離れています。車がすれ違うことのできない山道を登った先に、2軒だけ家がありました。雪が舞う中、それぞれの家でお話を伺うことができました。
1軒目は独居の女性が住んでおり、自家用車はなく、週に1度の間隔で松山に住む娘さんが生活物資を持って来てくれるそうです。通院も娘さんの送迎で行っていました。
2軒目は、数年前に帰郷した息子さんと2人で暮らしている男性高齢者でした。息子さんは車を運転できるため、今は生活には支障はありませんが、年齢的に高齢者の域に達しています。将来的に車が使えなくなったらどうするかの問いかけに、お父さんは「お手上げよ」と答えられました。その時にどうするのかを具体的に考えていない様子です。
交通空白地帯に住む方に直接お話を伺ったことで、過疎地域の現状を肌で感じることができました。
今後の予定
面河地区全体での調査結果は、3月の準備会で提示しました。
準備会は2018年3月で終了し、4月から「面河地区地域運営協議会」が発足します。今後はこの組織で本格的な課題解決を考えていくことになります。交通問題にも引き続き取り組み、移動に困難を抱えている過疎地域で住民は何ができるのかを模索していく予定です。
本科目は、「プロジェクト実践演習」、「プロジェクト応用演習」と続いていきます。久万高原町面河地区での取り組みでは、今後も協議会や部会との関わりを持ち続け、面河地区での活動に即して授業内容を組み立て、住民や役場と一緒になって実践的な学びを深めていきます。