企業基本情報
- 社名
- 株式会社地域法人 無茶々園 MUCHACHAEN CO., LTD.
- 所在地
- 愛媛県西予市明浜町狩浜3-134
- 設立
- 1993年
- 事業概要
- 農産物・海産物等の加工・販売など
- 年商
- 11億円(2023年度)
- 従業員数
- 41人(2023年)
ベトナム事務所 2013年設置 ダクラク省バンメトート市
柑橘王国・愛媛。その地位に飽き足らず、独自の柑橘栽培をはじめ、地域ぐるみ、地域に根差した事業展開を続けているのが、無茶々園である。現在は地域の旧小学校に拠点をかまえ、その背後には柑橘の段々畑が広がる。他方で、こだわりの農産物供給のためには海を越え、ベトナムでの拠点形成・拡大に尽力されている。
当社の名称は1974年に、創始者の一人・斉藤達文氏が柑橘の有機栽培を行い、この実験園地のことを無茶々園と名付けたことに由来する。1960年代後半の温州みかんの価格暴落や、農薬・化学肥料の多用による環境汚染や生産者自身への被害が、事業開始の背景に存在した。当初は生産物を農協に出荷していたが、有機農産物とそうでないものとのすみわけが難しく、1989年に当社の前身となる農事組合法人が設立された。これとともに、真珠の取り扱いも開始した。当地では真珠養殖も盛んであるが、愛媛(明浜)ブランドで販売されていないことや販売業者に頼る側面が強く、十分な収益を得ていなかったことから、みかんの販売ルートを活用して、地域の特産品も販売することを目的として設立することにした。
近年では福祉事業にも注力している。介護保険制度が施行した当初、高齢者向けの訪問介護事業は地域外の大手企業による展開が主であり、これを利用しても地域にお金が入る仕組みとはなっていない。そのため、1995年からワーカーズコープと連携して、福祉業務に関する講座の受講を進め、2013年福祉事業を展開する㈱百笑一輝を立ち上げた。有料老人ホーム、ディサービス、訪問介護事業、居宅介護支援、介護タクシーなど地域住民に必要なサービスを事業化してきた。2022年にはグループホーム明浜館を事業継承した。
現在、当社の従業員の8割は移住者であり、自ら当社や当地に関心を持ち、移住してきた人物である。
2005年頃、当社創設者の片山元治氏がベトナムのダクラック省バンメトート市を訪れ、現地での拠点づくりを模索し始めた。技能実習生が研修後にベトナムに帰国し、当社と連携しながら日本の産直(都市と農村の提携)モデルの仕組みづくりと持続可能な農業経営を目指した。現時点ではまだ道半ばではあるものの、帰国した実習生たちが生産したコショウを輸入し、生協に販売する仕組みはできた。ベトナム国内販売として、独自のブランドTEMPIを立ち上げ、試験的に取り組んでいるものの、軌道には乗っておらず今後の課題である。ベトナム以外での展開は、現時点では考えていない。ベトナムでの事業展開を成功させて道筋をつけることはもちろんだが、新たな国・地域で事業展開するならば、なぜそこを対象とするのかという明確な理由が必要であり、関係する人々との意味や価値の共有も重要となるためである。
持続可能な地域をつくるためには地域の自立と事業拡大が必要との認識がある。当社が関わる柑橘農業においては、高齢化・異常気象・物価高騰・人件確保など経営環境は厳しい。ピンチをチャンスに変えるためにも、様々なチャレンジをしなければならず、その一つが海外事業である。そのために、外国人人材から日本を実習先や就職先として選んでもらえるような賃金・住宅など生活環境を整備し、移住も含めた人材確保が目指されている。「種を撒けない農家に未来はない」との考え方から、海外と日本の新しい関係構築を図り、人材交流や輸出入を行い、お互いの地域の持続可能な発展を実現することが、今後の大きな目標とされている。