研究紹介

小型マグロ類 スマの養殖技術開発

  • 教員: 後藤 理恵
  • 学科:
  • コース: 海洋生産科学コース
  • キーワード: 養殖、借腹生産、スマ、不妊化、選抜育種

はじめに

スマとその分布域

“スマ”は、熱帯亜熱帯に生息する小型のマグロ類で、愛媛県南予の海域が生息の北限にあたります。“マグロ味の新しい養殖魚の開発”として2012年に研究を開始し、愛媛県や愛南町と連携し、スマの養殖産業拡大に向け、研究を進めています。養殖したスマは全身がトロになり、口に入れると溶けるような舌触りが特徴で、国内外で高い評価を得ています。

研究の概要

スマの計測

養殖を開始してまだ間もないスマは、出荷の際に大きさや味にばらつきが見られます。今後、高品質なスマを安定して生産するシステムを構築することが重要です。そこで、私たちは魚類の借腹生産を軸とした“スマ次世代育種システム”の構築に向け、以下の研究に取り組んでいます。
○良い特徴を持つスマ(スーパーエリート)を多数の養殖または出荷するスマの中から選抜し、その生殖細胞を凍結保存します。
○凍結保存した生殖細胞を移植した借腹魚を生産し、将来スーパーエリートに由来する子孫を産ませます。

現在、構築を進めているスーパーエリートの生殖細胞凍結保存バンクは、 “スマのバイオリソース”として、将来、産業用種苗を生産するための遺伝資源として活用します。

研究の特色

これまでの魚類の育種では、飼育している魚から選ぶ必要がありました。しかし、次世代育種システムでは、凍結した生殖細胞を利用し、借腹魚を通じて次世代を得ることができます。これにより、これまで生かしたままでは得られなかった様々な特徴(味や身質など)を指標に選抜することが可能となります。現在は、次世代育種システムの中の要素技術(生殖細胞の凍結保存技術、生殖細胞培養技術、生殖細胞の移植技術、宿主の不妊化など)の開発に加え、“美味しいスマ”を科学的に検証するための味の研究に取り組んでいます。

研究の展望

次世代育種システムは、生殖細胞凍結保存バンクを兼ね備えているため、自然災害などによる損失リスクにも対応しています。今後、スマのみならず、様々な養殖魚でも利用できるものにするため、汎用性のあるシステム作りを目指しています。