授業紹介

地元学

地元学とは?

地元に学ぶ地元学

「地元学ネットワーク」主宰の吉元哲郎氏によると、地元学とは「人が元気になる、自然が元気になる、経済が元気になる」活動を指します。「学」という字がついていますが、「経済学」や「社会学」などの学問分野を表しているのではなく、地元に学ぶということを意味しています。

土の人と風の人の出会いから始まる

地元学の基本は、地域の人(土の人)と学生などの外の人(風の人)が出会い、驚きや発見が起こり、それを表現することで住んでいる人の暮らしぶりや思いが明らかになります。その際に地域に住む人の知恵や技も再認識でき、それらを学ぶ機会があり、継承についての論議も生まれるかもしれません。さらに、そこから人々が暮らしに自信と誇りを持ち、地元と外の人とが連携し、ものづくりや地域活動が自発的に始まることがあります。

地元学の進め方

出会った方にお話しを聞く

出会いやきっかけを大事にする

学生の学びを例に、地元学の方法を紹介しましょう。まず、学生が地域の人にお話を伺ったり、歩いて気になることを調べたり、時には料理をごちそうになることもあります。お話を伺うのは、たまたま出会った方である場合が多く、面談の予約を取らないことや調査票を用意しないこともしばしばあります。それは、出会った瞬間やきっかけを大事にし、そこから話を広げることや深めることを重視するためです。また、事前に調査票を作成しないのは、既定の項目にとらわれると派生的に生じる話題への膨らみに至らないためです。そして、外の人は語りすぎず、地域の人に耳を傾けることに徹します。

ありのままを記録する

その後、聞いた話や気づいたことを模造紙にまとめます。模造紙には、地図、絵、写真、文章などを自由に表現し、表題をつけます。記述は、話の内容や見た事柄をありのまま表現することを心がけます。模造紙以外にも、文章で物語を書く、写真中心のパワーポイントを作成するなど、やりやすい方法で表現して
も構いません。

まとめた成果を地域の人に発表

地元の方に発表する

まとめができれば、お話をしていただいた方や地域内の方などを対象に、外の人が調べた内容を発表します。模造紙、写真、スライドなどの資料は、人々の記憶にしかなかったことや言葉になっていなかった事柄を文章化や可視化したものです。それを発表することによって地域の人の暮らしぶりや思いが周囲の人に伝わります。その中には、現代では消滅しそうな暮らしの知恵や技が含まれていることもあります。

地元学から地域活動へ

地元学を実施した地区同士が交流

地域の人と外の人の協働

地元学で可視化された思い、知恵、知識、技などは、地域資源の一種です。地域の人や外の人がこれらの資源の素晴らしさを見出すことができれば、資源の活用、すなわち地域活動を主体的・自主的に発案・実践する段階に至ります。しばしば外の人は、活動の促進や支援を行う立場に立ち、必要な情報、発想、労力などを企画や実施の段階で提供することもあるでしょう。ここから地域の人とともに行動し、信頼関係を築きつつ、息の長いつきあいが始まることもあります。時には、地元学を実施した地区同士の交流に発展し、学生が連携を担うこともあります。

学生の多面的な能力が育つ

本科目を履修する学生は、このような過程を経ることで地域資源の発見と可視化、活動の企画・展開にリアルタイムで携わります。実践では理論や計画が通用しない場面にも遭遇するでしょう。それ以前に、地域の人との対話の仕方に戸惑い、考え方の違いに驚き、反面、人々の温かさに触れることもあるかもしれません。学生が試行錯誤を繰り返しながらも人々との協働を経験することは、地域の中での立ち回り方を
修得し、コミュニケーション能力を高めることにもつながります。