授業紹介

社会共創学概論

課題解決に向けた新しい視点-「社会共創」を学ぶ

社会共創学概論がめざす学び

この授業は、トランスディシプリナリーの基礎的な考え方を踏まえたうえで、多面的な視点から地域社会の現状を把握し、地域に内在する課題の設定方法やステークホルダーとの協働の在り方について考えます。授業を通して、地域社会のあるべき姿を究明し、地域社会の持続可能な発展に貢献するための科学と社会の連携について学ぶことを目的としています。
授業では「町内会(自治会・組)」などをテーマに、グループワーク(ディスカッション、プレゼンテーションなど)を通して地域社会の課題について原因探索し、課題解決策を検討します。また、国内外の様々な事例を通して、地域資源の活用やコミュニティの再生、社会デザイン、担い手の育成、産業創出など、地域社会をめぐる課題と可能性について学びます。

環境問題について「生活知」と「科学知」から探る

「グローバル社会の進展に伴って深刻化する環境問題―インドネシアにおける貧困問題を背景とする水銀汚染―」について学ぶ授業回では、まず日本で起きた水俣病を例に、水銀が身体に与えるダメージについて学習します。さらに、水銀問題について世界的な動向を学ぶために、インドネシアを事例として、金採掘による水銀汚染の問題とその対策について考えます。
インドネシアでは、小規模人力金採掘(ASGM)が行われています。ASGMは、簡単な装置で金を採掘することができ、農業に比べて高収入を得ることができるため、女性や学校に通えない子どもたちを含む多くの人たちが働いています。しかし、金精錬のために使用される水銀の影響で、様々な健康被害が出ています。ASGMは一定の規制はあるものの実効性が低いため、水銀汚染は拡大しつつあることが問題となっています。
これらの問題に取り組むためには、トランスディシプリナリー・アプローチ(TDA)がキーワードとなります。TDAとは、科学と現実社会が交わる問題領域で、ステークホルダーと科学者の双方が企画段階から学び合うことによって問題を特定し、検討すべき課題を設定して、課題解決に向けて継続的に協働していくという手法です。その際には、実社会から得られる「生活知」と研究から得られる「科学知」を連動させながら、課題解決を実現します。
授業ではその一例として、枕や寝具の素材として使用されているカポック繊維を活用し、水銀汚染された水の水質改善・新素材の開発について考えます。これまでに、汚染された河川水を加工したカポック繊維にろ過することで、水質が改善されることが研究されています。カポック繊維「生活知」と、それを加工する新素材の開発「科学知」との連動(「知の統合」)によって、ASGMで水銀汚染された廃水を、持続可能的に浄化するシステムの構築が期待されます。
この授業を通して、学生たちは、地域社会が抱える問題の本質を理解し、TDAの手法やステークホルダーと協働する指針を学びながら、課題解決思考力を身につけていきます。現代社会の大学に対する期待は高まりつつあります。「どのように問題を解決するのでしょう?」また「大学は本当に地域社会の抱える課題を解決できるのでしょうか?」この授業を通して一緒に考えませんか?