授業紹介

日常生活から読み解く地域社会

地域社会論がめざす学び

私たちが暮らす社会は、様々な人や組織の働きによって成り立ち、かつ日々変化しています。しかし、最初からこうした大規模な動向を的確に理解したり分析したりすることは簡単ではありません。では,どのようにして社会を読み解く「目」を養っていけばよいでしょうか。冒頭の文章を、別の視点から言い換えるならば、私たち一人ひとりの普段の行動、すなわち日常生活もまた人間社会を構成する一部に他ならないことになります。そこでこの授業では、「日常生活から読み解く地域社会」と題して、誰もが関わる事象である食や買い物などへの注目から、そうした行為が地域社会とどのように結びついているのかを理解します。そして今日の地域社会における様々な課題の解決に向けて、自身の生活を基点として解決策を考える力を育成することを目的としています。こうした地域に関する基礎的な内容を学ぶという観点から、この授業は地域資源マネジメント学科の必修科目となっています。

私たちの食べ物はどこからくるのか―疑問から知る社会の仕組み

授業の中で重視するのは、授業を受ける学生自身の意識や行動です。日常生活の中で、自分はどのお店で買い物をするのか、自分が食べた料理に使われている食材はどこからどのようにやって来たのかといったことは、普段あまり意識する機会はありません。しかしこれらの背景には、社会の壮大な仕組みが存在し、機能しています。仮に1週間ずっと、自分が愛媛県外に出なかったとしても、身の回りのものは日本全国にとどまらず、世界各国から供給されていますし、インターネットを介して世界中と結びついているのが現代社会です。こうした状況について、授業中の作業で学生から出された回答結果を提示しながら、それが社会の仕組みとどのように関係しているのかを授業の中で読み解いていきます。
また授業では、地域社会の課題抽出やその解決策を考えるという内容にも触れます。この際にもまずは、学生自身の社会との関わりを意識した発想や考えが重要になります。例えば、地域の農業をどのようにすれば活性化できるのかという質問を投げかけると、「農産物などをブランド化する」という回答がよく出されます。それならば、他の同種の農産物と区別する(すなわち、ブランドとなる)ためにはどのような仕掛けが必要となるか、あるいは、自分ならどのような商品であれば他より値段が高くても買ってもよいか、ともう一歩踏み込んだ問いかけをすると、具体的な方法や独創的なアイデアはなかなか出てこないものです。また、商店街の活性化というテーマも、地域社会の課題として学生がよく取り上げる事柄の1つですが、学生自身の普段の行動をみると、さほど商店街を利用していなかったり、身近な商店街の特徴を十分に認識していなかったりする場合がしばしばみられます。こうしたテーマに、オリジナルのブランド豚を考案してみる作業や、商店街のメンタルマップを描いてその特徴を考える、といった内容を授業に盛り込んでいます。
このように、学生が考えたこれらのアイデアや傾向を教員・学生が共有することで、そのテーマに一層の関心が生まれることが期待できます。個々の学生が自ら考える作業だけでなく、グループワークによってお互いの考えを出し合ったり、そこでの検討結果をプレゼンテーションしたりする機会も、この授業では取り入れています。この中からは、教員も思いつかなかった発想が出てくることもあり、驚かされます。

実社会で考える大切さ

この授業に限らず、大学の授業で教わる内容は、実社会と何らかのかたちで必ず結びついています。個々の授業の内容を聞いてその授業の単位を取る、ということを目標にするのではなく、授業で聞いた内容が実社会のどのようなことと関係しているのかを自分なりに考える、という意識を少しでも早く持ってもらうことが大学生として非常に重要です。そのきっかけとして、この地域社会論が「教わった内容を社会で実感できる授業」となることを目指しています。ちなみに、教員個人のキャラとしては雑談が好きで授業の最初や合間に話したりするのですが、おもしろいと思ったときにはどうぞ笑ってください。励みになります。