授業紹介

授業内容

「社会的ジレンマ」とは、個人の私的利益と社会全体の公共的利益とが対立する状況を表します(例えば、自転車の放置駐輪は、自分一人にとっては都合が良い行動であるが、社会全体にとっては望ましくない)。
この授業では、都市問題、交通問題、環境問題、地域防災をはじめ、様々な社会問題の根本に社会的ジレンマの問題が存在していることを理解するとともに、持続可能な地域社会の実現に向けて、いかにすれば社会的ジレンマの問題を解消することが出来るかについて、社会心理学の諸知見を学びながら、各自の考えを深めていくことを目的としています。
まず、社会的ジレンマの考え方について、社会心理学だけでなく、経済学、政治学、社会学等の社会科学諸分野における関連概念を踏まえて、その定義を述べると共に、現実の様々な社会問題が社会的ジレンマを抱えていることを説明します。その上で、受講者自身が実際に「社会的ジレンマ」ゲームを実験的に体験し、そこで得られた知見を踏まえて、「人はいかにして協力的に振る舞うのか」について考え、グループディスカッションを通じて互いの意見を述べ合います。
次に、社会的ジレンマの解決策として、構造的方略(structural solution)と心理的方略(psychological solution)の2つのアプローチがあることを述べ、その内容や方法について具体的な事例を交えつつ説明します。そして、社会的ジレンマの解決に向けた心理的コミュニケーションを受講者自身が提案し、その提案内容を演劇的に実践しながら、効果的なコミュニケーションのあり方について学んでいきます。
その上で、リーダーシップ、信頼、地域アイデンティティ、合意形成等、社会共創学部に関連するテーマを取り上げ、社会心理学の観点からその条件や課題について学び、地域ステークホルダーと共に社会的ジレンマの問題を協働的に解決するための基礎的・実践的思考力を涵養することを目指します。
最後に、社会哲学的な観点から、社会的ジレンマの根幹には、社会の大衆化という近代特有の問題があることを理解し、現代大衆の心的特徴やその社会的影響について学びます。そして、いかにして社会の大衆化による諸問題を緩和できるかという観点から、人々の公共性を活性化するための処方箋について、哲学や社会学、民俗学等の社会科学の諸知見を踏まえながら総合的に考察していきます。

教員からのコメント

『大衆社会の処方箋』(藤井・羽鳥著)

テキスト:『大衆社会の処方箋』(藤井・羽鳥著)

地域づくりやまちづくりを進める上では、人々の「心理」を理解することは極めて重要です。人々の心のあり様次第で、地域社会の問題解決につながる諸活動が活発化することもあれば、その反対に、様々な社会問題が深刻化することもあるためです。こうした心の理解が、地域の課題解決を導く方途を考える上でのヒントになることを期待しています。