授業紹介

地域デザイン論

人×空間×しくみ→より豊かな暮らしの実現

「地域デザイン」って何?

「地域活性化」、「地域おこし」など「地域」という言葉は、地方創生が求められる今、これからのキーワードとして注目を浴びています。では、「デザイン」と聞いて、どんなことを連想するでしょう?服飾デザイン、デザイナーなどスマートな印象を持っている人もいる一方で、「私にはそんな才能がない」と諦め混じりの人もいるかもしれません。デザインの本質は、問題解決に向けて人(の心)を動かすことにあります。つまり、問題を明らかにし、計画を立てた上で、人に伝えるプロセスが重要で、一般的な印象のデザインは最後のアウトプットにすぎません。地域デザインとは「地域をデザインする」といったように地域を対象として捉えるだけではなく、地域のために、地域(の人々)によって、地域の問題を解決し、より豊かな暮らしを実現していく営みを意味します。

松山ロープウェー通りの地域デザイン

(写真1)地域デザインの好事例、松山ロープウェー通り

(写真1)地域デザインの好事例、松山ロープウェー通り

地域デザインの事例として、松山市のロープウェー通りという松山城につづく道路空間づくりを紹介しましょう。今のロープウェー通りは観光客をはじめたくさんの人が行き交い、とても賑わっていますが、以前は、古いアーケードがかかった暗い商店街で、北の文教地区と南の中心街をつなぐ単なる通過点にすぎませんでした。それが、写真1からもわかるように、道路舗装をアースカラーで統一し、建物の壁面や看板にデザインガイドラインを導入することで、すっきりした景観になっています。さらに、車道を一車線に削減することで歩道が広がり、ゆったりと歩けるようになっています。これらの整備の結果、歩行者交通量が3.5倍になり、全国でもトップクラスの地価上昇率につながりました。このような素晴らしい空間に変えることができたのは、長年にわたって、市役所、商店街の方々、専門家の集団が、地域のため、熱意のこもった協議を重ねてきたことが一番の要因でした。こうした地域の問題を地域の人々が協力し合って、創造的に解決していくプロセスはまさに地域デザインの好事例といえます。

地域を読み解く力

(写真2)昭和初期からの現在までの地形図を比較し、空間変容を読み解いていく

(写真2)昭和初期から現在までの地形図を比較し、空間変容を読み解いていく

地域デザインには松山ロープウェー通りのようにポイントとなる地区をよくしていくだけではなく、広域的な視点も重要になります。たとえば、写真2は松山の地形図を時系列で比較して、昭和初期から現在までの道路やダムなどの社会基盤と居住地域など街の使われ方の変化を探している様子です。この後、松山市をとりまく社会経済状況や社会基盤や都市施設の整備計画やその事業手法などを調べます。そして、空間の変化としくみを対応させることで、なぜ昭和40年代に社会基盤が急速に整備されていったのかを読み解いていきます。過去から現在までの時間的変化から地域を読み解く能力を磨いていくことで、将来の地域を広域的に計画していくための視点を学んでいきます。

専門に強い社会共創学部

この授業では、1年次のうちに地域デザインの必要性を理解することによって、2年次、3年次のより専門的な知識や技能を習得する意義を理解します。たとえば、地域をデザインする点は2年次の「景観デザイン」で、地域の人々によって問題を解決する点は、3年次の「住民参加と合意形成」でより深く学んでいきます。また、社会共創学部の特徴であるフィールドワークで学んだ知識や技能を使ってみることで、自分のものにしていくことができます。「社会共創学部は、実践力重視で専門力はちょっと・・・」と思っている人もいるかもしれませんが、専門力は実践の場で磨かれてはじめて意味をなします。社会共創学部では、地域創生のように、これからの社会で必要とされている専門力の箱を早い段階から準備し、その後の授業や実践を通して力を効率的に蓄積していくことで、真の専門力を身につけることができるといってよいと思います。