研究紹介

グローバルで、ローカルな地域の未来を考える ~インドネシアと日本の農山漁村から~

  • 教員: 島上 宗子
  • 学科:
  • コース: 農山漁村マネジメントコース
  • キーワード: インドネシア、農山漁村、資源管理、実践型研究

研究のきっかけ

私の専門は東南アジア地域研究です。とくにインドネシアの農山漁村でのフィールドワークを通して、村の自治と資源管理に関する研究に取り組んできました(愛媛大学HP「最先端研究紹介 infinity」もご参照ください)。

近いようで遠い存在だった東南アジアに関心を持ち始めたのは大学時代。授業で東南アジアと日本との深いつながりを実感したことがきっかけでした。「東南アジアの現実を知りたい」「東南アジアの人々ともっといい関係をつくりたい」。当時抱いたシンプルな思いがその後の人生を突き動かしてきました。大学院生の時にインドネシアの農村で一年あまりのフィールドワークに取り組んで以来30年近く、インドネシアと日本を往還しながら、農山漁村の可能性と課題を掘り下げる研究・教育・実践に従事しています。

研究の魅力①: ローカルでグローバルな農山漁村の変化を見つめる

インドネシアは豊かな海と森に恵まれ、言語・慣習の異なる300以上もの民族が暮らす多民族国家です。農山漁村には、その土地々々に根ざした暮らしが今も息づいています。たとえば、焼畑を主な生業とするT村では、森の伐開、播種、収穫などの過程で様々なタブー、決まり事、儀礼があり、一つ一つの行為や供え物に意味があります。村人に話を聞いていくと、鶏肉の供物一つをとっても、その土地の創世神話、祖霊・精霊、世界観につながる広がりと深い意味があることがみえてきます。

身近な自然を活かし、その土地に受け継がれた慣習に基づくローカルな暮らしが息づく一方で、グローバルな側面も共存しています。グローバルな資本やニーズに後押しされた農園開発や自然保護政策により村人の森林利用が制限されたり、国際市場の動向に左右されるカカオ、コーヒー、ゴムなどの換金作物も拡がっています。スマートフォンの普及により、今や世界中どこにいてもSNSで村人とつながりあうこともできます。「ローカル」と「グローバル」がせめぎ合いながら共存する村の暮らしがどう変化していくのか、研究者自身も関わり合いながら見つめていけることはこの研究の魅力の一つです。

研究の魅力②: 農山漁村の課題と可能性を掘り下げる

ローカルでグローバル、という意味では、日本の農山漁村も同様です。インドネシアと日本を往還していると、共通点や相違点に気づき、課題と可能性を掘り下げる糸口が見えてくることがあります。日本では農山漁村の過疎化・高齢化が積年の課題となっています。子供たちで溢れるように見えるインドネシアの農山漁村でも、若者の農業・農村離れは進行しています。一方で、SNSや都市や海外とのネットワークを活かし、農業・農村起業をはかる若者も出始めています。なぜ、若者は農業・農村を離れるのか、農山漁村の魅力・可能性は何か。インドネシアと日本、お互いをよき「映し鏡」とすることで、課題と可能性がより明確に見えてくるかもしれません。

研究の魅力③: 未来を共に創る友を得る

地域研究は、外部者である研究者が地域にまみれ、地域の内側から地域をより深く理解しようとする学問です。地域に滞在し、人々と関わりあう中で、外部者である自分の立ち位置に悩む場合もあります。地域を研究し理解するだけではなく、地域の課題解決に資する実践型研究に踏み出す研究者もいます。私自身は、課題解決に直ちにつながらずとも、地域に関わり、理解しようと試み、そこでの発見と成果を地域の人々と共有しようとする意志と姿勢があれば、地域研究はおのずと実践型研究になるのではないかと考えています。生身の人間が暮らす地域を研究対象とすることは常に自分が試されるようなしんどさもありますが、だからこその発見や気づきもあります。また、未来を一緒に考えたい、共に創りたいと思える友に出会えることもあります。それが、私にとって研究の最大の魅力かもしれません。

メッセージ

愛媛大学には、インドネシアを体感できる様々なプログラムがあります。社会共創学部の「海外フィールド実習」はインドネシアでも実施されていますし、共通教育発展科目の「SUIJIサーバント・リーダー養成に関する科目」は日本とインドネシアの農山漁村で両国の学生が学びあうプログラムです。ぜひ学生時代に、多様な民族が暮らし、豊かな森と海に囲まれ、開発と環境をめぐる課題も山積しているインドネシアを体験してみてください。人生を変えるような出会い・気づきが得られるはずです!

参考
SUIJIサービスラーニング・プログラムfacebook: https://www.facebook.com/SUIJISLP