研究紹介

地域の記憶の継承によるコミュニティ再生の実践研究

  • 教員: 松村 暢彦
  • 学科:
  • キーワード: 地域の記憶、共有、まちづくり

研究の特色~地域の記憶を共有し、継承することの意義~

みなさんにも思い出の場所があると思います。家族で一緒に行った動物園、通っていた小学校のブランコ・・・私にも、小学生のときに買ってもらったばっかりの金属バットを忘れて帰った空き地、息子がはじめて自転車に乗れた近くの公園など地域にたくさんの思い出の場所があります。地域に暮らすということは、無味乾燥な「空間」に生活の記憶を刷り込んでいくことで、自分にとって特別な「場所」にすることです。こうした場所を地域の人々と共有することで、社会的なつながりやモラルを作り直し、地域への愛着をはぐくむことができます。この研究では本当に地域の記憶を共有することで、地域アイデンティティをはぐくむことができるのかを松山市久米地区で久米公民館と協力しながら検証しました。地域の記憶を、東道後温泉祭りのイベントで大きなパネルに思い出の場所を書いてもらったり、公民館でいろいろな人にヒアリングをしたりして集めたあと、地域の記憶を「久米郷里新聞」としてまとめて4回、発行し配布しました。事前、事後に行ったアンケートの結果、地域の記憶を共有することは地域アイデンティティを高める効果があり、さらにそれには時間的展望がかかわっていることが明らかになりました。つまり地域の記憶という過去を知ることによって、今の自分、これからの自分を考えるきっかけになることがわかりました。

研究の展望~地域の記憶をまちづくりに活用する~

この研究の成果から地域の記憶をもとにしたカードゲームを作成し、それを使った郷土学習プログラムを、小学生を対象に久米公民館で実践しました。久米駅などの施設や地域の人々の暮らしに関するいろいろな気づきが自然と生まれてきて大成功でした。こうした地域の記憶は、どんな地域にも人が暮らしていれば必ずあります。ですから方法論を確立させることですべての地域のまちづくりに活用することができます。東日本大震災以降、災害の伝承の重要性が見直されていますが、災害の記憶も含めた地域の記憶を今の世代、次の世代に伝えていくことが地域で暮らすということではないかと思います。

メッセージ

『地域デザイン』というと、自分の想いのまま、勝手気ままに街、地域のかたちを変えていくイメージをもつ人がいるかもしれません。しかし、地域では、いろいろな人たちが日々、幸せを願って暮らしを紡いできましたし、これからも続いていきます。その営みに対して敬意を払いながら、より豊かな(物質的な意味だけではなく)社会、地域のすがたを一緒に考え、実現していく取り組みが地域をデザインするということです。ですから、専門家として関わっていくときに、そこの地域の人々とコミュニケーションをとりながら、一緒にまじめに、楽しく地域のすがたを考えていく必要がありますし、場合によっては自分の小さな専門分野を超えていく心構えも必要です。それとあわせてそのような地域をつくっていく人も育てつつ、地域のことを考えて暮らしを少し変えてみようと思う人を増やしていく必要があります。つまり、研究と教育と社会的な実践は一体となって不可分な関係にあります。

学生の皆さんには、大学、大学院にいる間に、自分たちの研究や活動がよりよい地域や社会にしていくのに役だったと少しでも実感できる経験を積んでほしいと願っています。その経験は、書店に並ぶノウハウ本よりあなたの人生を豊かにしてくれます。そんなチャンスがあふれる社会共創学部であなたをお待ちしています。