研究紹介

ウェアラブルデバイスを使って、健康的な職場環境と企業価値向上を提案する

  • 教員: 山中 亮
  • 学科:
  • キーワード: スポーツデータ分析、リーダーシップ、学習理論、スポーツボランティア

客観的データ分析により健康的な職場環境と企業価値向上を提案する実証的研究

研究の概要

企業経営の分野で新しい企業価値の創造への取り組みが見られ、近年「健康経営」が注目されています。「健康経営」とは、健康管理を経営的視点から考え戦略的に実践するマネジメント形態で、企業評価に直結する財務要因だけでなく、持続可能性を持つ企業評価につながる、非財務要因まで配慮した枠組みです。しかし、職場レベルで「健康経営」と企業の生産性との関係を、客観的データを基に分析を行っている研究は多くありません。そこで本研究では、健康に働きかける取り組みと、生産性の向上を実証します。すなわち、「働きながら生活習慣病罹患リスクを改善できる職場環境」を提案することが目的です。
具体的には、ウェアラブルデバイスを活用し、身体活動データの蓄積を基に、職場における労働者の健康をモニタリングし、生活習慣病罹患リスクや死亡リスクを改善できる職場環境に導くための介入プログラムの開発と評価を実施します。

背景と経緯

健康の維持増進は、個人の取り組みに委ねられる傾向があります。しかし、企業という社会的な組織の中で、健康マネジメントと生産性の両立を実現することで、価値向上を図る企業体を構築していくことが、well-beingを指向し、社会を構成する1つの礎と捉えられています。企業の中で行われている労働の定義については多くの概念が存在しますが、現象として観てみると、様々な身体活動から構成される総体として捉えることができます。労働が様々な疾病リスクや死亡リスクにつながるということは、その労働の中で行われる身体運動の総体が、健康を害する方向性に向かっていると考えられます。もし、労働を構成する身体運動を健康に向かうように改善し、総体である労働自体の方向性を健康に向かわせることができるとすれば、労働をすればするほど健康に向かう身体活動として、構成が可能となってきます。

本研究で注目した座位行動は、成人の1日覚醒時間の55~60%を占めることや、生活習慣病罹患リスクや死亡リスクと関係していることが報告されています。しかし、現段階では日本人に対する長期的かつ疫学的な研究が多く行われていないため、国内での対策も遅れています。近年普及しつつあるウェアラブルデバイスを活用しデータ分析の手法を用いることで、職場の健康マネジメントをモニタリングする環境の構築を実現できることは、非常に意義深いと捉えています。また、健康マネジメントの生産性への影響を明らかにしていくことで、働きながらも、生活習慣病罹患リスクや死亡リスクを改善できる職場環境の提案につながっていくことが考えられます。

研究の特色

健康への働きかけの評価と企業の生産性を両立させる実験は、国内において多くありません。また、身体行動と人事データ(ストレスチェックや健康診断)を関連させた、モニタリング環境を構築している企業も多くありません。健康マネジメントや職場環境のモニタリング環境構築を実際に行っていくことは、大企業のみでなく、我が国の99%以上を占める中小企業にも必要不可欠な取り組みです。この研究が実証されることによって、座位行動の分布や変動が明らかになり、国レベルで座位行動の概要を把握することができるようになります。さらに、年々データが蓄積されていくと、座位行動に影響を及ぼす要因の解明にもつながります。客観的エビデンスを基に、健康マネジメントと生産性を両立していく議論の基礎として重要な研究となっていきます。

研究のフレームワーク

研究のフレームワーク

今後の展望

実際にウェアラブルデバイスを用いたモニタリング環境が構築できてくると、県内の中小企業において導入されていくことが予想されます。そのことを通じて、健康な地域を構築していくことをサポートできる研究として取り組んでいきたいと思います。
実際の現場と研究を結び付けていくことは、非常に価値のある取り組みだと思います。研究を進めていく上で、研究の側面だけではなく、様々なステークホルダーの方々と共働していくことが重要になってきます。研究を深めていけるだけでなく、人間としても成長していける取り組みとなるかもしれません。