研究紹介

生簀網清掃用自動ロボットの研究

研究概要

網への付着物

網への付着物

我が国では、急速な社会の高齢化で、様々な分野で労働力不足が叫ばれています。これは、愛媛県の特色ある産業のひとつである水産業、特に養殖漁業でも同様です。このような産業の労働環境を改善することは、今後の日本の食を守るために重要です。
労働力不足を補い、人間の作業を補助させる目的で、様々な分野でロボットを導入することが検討されています。これらの背景には、コンピュータやメカトロニクスの技術の発展があります。しかし、農業や水産業などの一次産業では、まだまだ人間の能力に頼っているのが現状です。
そこで私たちは、水産業、特に養殖業における作業負担の軽減を目指した研究を始めることにしました。その第一弾として、生簀網の清掃作業の自動化を考えます。これまでは、潜水したりクレーンで生簀を海上に持ち上げた後、高圧水流で海藻などの付着物を吹き飛ばすという清掃方法が主な手段でした。しかし、このような作業は大がかりで危険な上、養魚に与えるストレスも大きいと考えられます。
本研究のアプローチは、高圧水流を用いず、低エネルギー消費、かつ養魚に与える影響が少ない、小型で安価になる可能性のあるシステムを提案します。

研究の特色

網上を移動するロボット(概念図)

網上を移動するロボット(概念図)

生簀の清掃を行う目的のロボット(機械)が近年開発されましたが、システムはやや大がかりで、高圧水を利用しているため、養魚にストレスを与えることが懸念されます。本研究で提案するロボットは、網に付着物が「付かない」ようにするという、これまでとは異なるアプローチで開発されます。そのためには、自由に網の上を動き回ることができる仕組みを作ることが必要になります。また、実用的な面を考えると、なるべく少ないエネルギーで動けること、すなわち、長時間動けることが重要になります。このために、なるべく簡単な機構で網の上を動かなくてはなりません。このような仕組みを現在開発中です。

研究の魅力

生簀ロボットの一部

生簀ロボットの一部

私はこれまで、主に室内を移動するロボットの研究を行ってきました。人間に違和感や不快感を抱かせることなく、「心地よい避け方」で衝突を回避するロボットの研究は、介護・福祉の分野で重要となるでしょう。今回提案する生簀清掃ロボットは、これらの研究開発で得た知見を他の分野で活かすことを考えたものです。しかしながら、「網の上」を移動すること、さらにそれを「水中」で行うことは、全く新しいチャレンジです。これまで得た知識を総動員しつつ、新しいものを作り出すというのはとてもやりがいがあります。失敗や試行錯誤をしながら、試作に励んでいます。

研究の展望

生簀網の表面を自由に動くことができれば、様々なことが可能となるでしょう。例えば生簀の修理をしたり、生簀内部の様子を観察したり、養魚を捕まえたり・・・。水中で動くロボットということになると、さらに応用範囲は広がります。養殖や水産にとどまらず、船やインフラの点検などにも使えるかもしれません。陸上ではドローンなどで行われ始めていることが海中でもできれば、人間は危険な作業から解放され、より効率よく様々な仕事が行えると思います。これからの人口減少社会において、重要度の高い研究であると考えます。

この研究を志望する方へ

地域の問題に目を向けると、様々なことが見えてきます。また、新しい技術を追いかけていくことで見えてくるものもあります。そして、これらが組み合わさったとき、新しい価値が生まれてくると思います。ロボットの技術を「何に」応用するのか。地域の問題というのは、ロボット開発におけるアイデアの宝庫だと思います。一緒に地域の問題を解決するロボットの研究に取り組みませんか?