研究紹介

農産物直売所を核とした地域活性化の新展開

  • 教員: 山藤 篤
  • 学科:
  • コース: 農山漁村マネジメントコース
  • キーワード: 農産物直売所、農村活性化、農産物マーケティング

研究の特色

さいさいきて屋(今治市)

さいさいきて屋(今治市)

農産物直売所は、2010年の統計によると全国に1万6,816店舗あります。ちなみに大手コンビニエンスストアのローソンが2017年で1万3,111店舗ですから、それを超える数で展開をしていることになります。ひとことに農産物直売所といっても、運営主体や展開方法、売り場面積や売上高は、さまざまです。
ところで愛媛県といえば柑橘産地として全国的に有名ですが、年間売上高10億円を超える店舗が県内に4店舗もある農産物直売所トップクラスの県でもあります。たとえば「さいさいきて屋」(今治市)は年間売上げ、およそ28億円です。人口が18万人程の都市、すなわち“胃袋の小さな都市“でありながら全国トップクラスの売上があります。

 
百姓百品村(西予市野村町)

百姓百品村(西予市野村町)

農産物直売所の魅力は、地元産の新鮮で安心・安全な食材が手に入ることだけではありません。農産物直売所の野菜の特徴は、形が不揃い、小さな傷というだけでスーパーに並ぶことができないものです。これまで小規模農家や高齢農家の作った野菜は、売りたくても出荷できないものが多くありました。農産物直売所ができたことによって、そうした小規模農家や高齢農家が出荷できるようになり、所得確保の場になりました。
それ以外にも農産物直売所には、いろいろな機能があります。1点目は、農家が身近な存在になることです。農産物直売所では、出荷品に農家の名前が書いてあります。それによって安心・安全だけでなくファンやリピーターが生まれ、農業を身近に感じることができます。2点目は、地元学校給食への食材の提供です。学校給食で使う食材として農産物直売所に出荷している地元産を使うことにより、輸送コストをかけずに旬の新鮮な野菜を提供できます。入札(価格が安いところ)によって決まりますが、農産物直売所があることで学校給食の地元産率があがっているケースがあります。3点目は、雇用創出です。年間売上高に応じて、相当の雇用がうまれます。地域の重要な拠点となっているといえます。

研究の魅力

農業・農村を取り巻く現状は、たいへん厳しいといえます。それだけ課題が多く、やりがいがあります。農村で実践しているさまざまな事例から学び、研究をすすめると、これまで見落としていた発見に繋がることがあります。その発見は、いつか社会を変えることに繋がるかもしれません。地域の人から「しっかりやれよ」、「応援してるからね」と励まされたとき、とても嬉しい気持ちになります。これが地域で研究する魅力です。

研究の展望

農産物直売所は小規模農家や高齢農家にとって重要な出荷先となっています。しかし今後は小規模農家・高齢農家だけで地域農業を維持していくことは簡単ではありません。
そうしたなか、農産物直売所に出荷していたグループが、自ら農業法人をつくり、外食などに使うネギの生産をはじめたところがあります。そこでは地域にくらす障害者を積極的に雇用し、全国平均の3倍以上の工賃を支払っています。小規模農家・高齢農家同様、これまで地域において雇用の機会が少なかった障害者の活躍の場となっています。そして農村では耕作放棄地が増えるなかで、農地を守るモデルといえます。
小規模農家・高齢農家、障害者など地域にくらすさまざまな人が担い手の中心となって持続可能な農業・農村を実現していくことが大切です。そのためにも地域に根付いた研究を進めます。

この研究を志望する方へ

農村は高齢化の進展と高齢化・過疎化が進んでいます。また農業ではグローバル化が進み、地域(ローカル)農業の維持が、ますます厳しくなっています。地域農業・農村社会の課題は山積みです。これまでの研究は、起こったことを分析することがメインでした。これからの研究は、社会でくらす人々とともに新しい仕組みを考えていくことが大切だと思います。必要なのは、前向きで明るい気持ちと情熱です。多くの課題を考えるうえで、私のゼミでは本音で議論できる度胸とユーモアも磨いています。