研究紹介

サステナブル・プロジェクトのメリットの定量分析

  • 教員: 入江 賀子
  • 学科:
  • コース: 環境サステナビリティコース
  • キーワード: サステナブル・プロジェクト、選好、便益評価、社会影響評価、統計分析、計量経済分析

研究背景と概要

私の研究は、環境やサステナビリティに関連したプロジェクト・政策・サービス・製品(以下、サステナブル・プロジェクト)に対する選好、特にそのメリットや価格プレミアムを、定量的に(数字で)分析することです。私は、企業や行政機関の環境対策の仕事をしてきましたが、サステナブル・プロジェクトにも、さらに工夫できる点がある場合があるため、どうすればより良いプロジェクトになるかを検討することに意義があると考えています。また、サステナブル・プロジェクトは、それを実施する側にとってもメリットが感じられる内容である必要があると考えます。そこで、プロジェクトの方向性をいくつか検討して分析し、総合的に良いと思われる方向性を見出していくことを目標にしています。特に、新しい技術や仕組みで作られたプロジェクトや、今後行うプロジェクトの内容を、そのプロジェクトの便益を受ける側の視点で検討しています。

私の研究は、主に以下の流れで行っています。まず初めに、企業や行政機関との共同調査(現状や課題の把握など)を定性分析(数字によらない分析)などで行います。そして、いくつかのプロジェクトのメリットを定量的に比較分析し、企業や行政機関と方針を議論するという流れです。定性分析も行いますが、統計を使った分析は、手法的に面白いと個人的に感じますし、多くの調査対象者を分析できるという大きな利点があるため、定量分析を主たる手法としています。分析によく使うのは離散選択モデルです。最近は、ベイズ統計なども分析に取り入れています。

 

研究事例:10年先を見越した愛媛県の耕作放棄地対策のデザイン

愛媛県内の耕作放棄地の写真

愛媛県内の耕作放棄地の写真(住宅のすぐ横にこのような放棄地が広がっています)

耕作放棄地の増加は、食料安全保障との関係だけでなく、産業としての農業の停滞と経済的な減退、鳥獣害やゴミ問題など、地域の持続可能性にも結びつくような深刻な課題です。耕作放棄地問題は、今後さらに深刻な地域の経済・環境・社会上の問題に発展する可能性があり、何か抜本的な対策が必要といえます。そこで、10年先を見越した愛媛県の耕作放棄地対策のデザインを、愛媛県の自治体と検討しています。私が開発している社会影響評価の手法をもとに、数種類の対策が地域にとってどのような影響をもたらすと思われるか、地域の人の意向を分析しながら、望ましい対策を検討しています。

 

今後の研究予定の例

今後の研究予定としては、以下のようなものがあります。

サステナブルな農業経営モデルのデザイン:企業関係者など多くのステークホルダー(利害関係者)と協働して、未来型の有意義な農業経営モデルを検討しています。今後の農村のサステナビリティを高めるような経営モデルを見出すことを目指しています。
SDGsの実践による企業戦略の検討:SDGsに取り組んでいる企業は、リクルートや製品販売上、どの程度有利になるのかを分析する予定です。

 

授業の調査活動事例:農漁村島嶼地域の活性化案、環境配慮住宅の需要調査

私は、環境経済学、統計学、プロジェクト演習、フィールド実習、卒業研究などの授業を担当しています。実践面の授業であるプロジェクト演習、フィールド実習では、新しい環境対策を、地域活性化や、企業が提供するサービスへの新規需要の創出などの、社会経済的なメリットの観点から検討することが多いです。たとえば、2年次授業「フィールド実習」(愛媛県内の農漁村島嶼地域の活性化案の検討)では、高齢化・過疎化が進んでいる農漁村の島嶼である愛媛県中島を、様々な環境プロジェクトなどで、どのように活性化できるかを検討しました。授業には松山市様にも参加頂きました。新型コロナウィルス対策のもと、インターネットを利用した遠隔での発表会を行いましたが、みな頑張って面白い発表をしてくれました!

 

中島の産業と環境政策

 

学生が考えた中島活性化案の例(10グループが様々なアイディアを出してくれました)

 

また、4年次授業「卒業研究」では、研究室所属の学生が、愛媛県内での環境配慮住宅の需要調査を行っています。政府の政策等もあり、今後、環境に良い住宅の市場がより拡大してくることが見込まれます。現在、愛媛でどのような需要があり、今後どのようにすれば、新規需要を開拓できるのか、という観点から調査研究を行っています。