研究紹介

野菜や果物の個性を活かすための学問

  • 教員: 小長谷 圭志
  • 学科:
  • コース: ものづくりコース
  • キーワード: 機械 計測機器 生物 農林水産物

はじめに

園芸バサミの改良の取り組み

農業用プラスチックハウスにおける簡易環境計測装置の導入の試み

私の専門は農業工学です。農業工学は農学部と工学部のちょうど中間、ただし、日本では農学部の一分野として位置付けられることが多いです。農業工学を学んだ人がどのようなところで活躍しているかというと、農業機械、選果機、計量機器などのメーカーが多いですが、勉強のノウハウや基礎的な知識などを活かして異分野で活躍する人もいるようです。

この分野に飛び込んでくる学生さんはというと、小中学校のときから図画工作や理科・技術・美術などが好きで趣味になってしまった人もいれば、もともと工学部にいて学んだことを一次産業に活かしたいと一念発起する人もいます。

私の研究

内部の傷みが判別しづらいアボカド

特徴的な顔を持つニンジン

さて、私の研究はと尋ねられたなら、「野菜や果物の個性を活かすための研究」と説明することにしています。この個性には、産地で野菜や果物が大きくなっていくときのこと、収穫したあと店頭に並ぶまでのこと、購入してから各家庭で保存しておくときのことの三つの段階があります。それぞれ、生産、流通、消費といいます。また、野菜や果物が樹脂・金属などでできた工業製品と大きく違うのは性質が大きくばらつくということです。これは木材や天然物に由来する生物材料などでも当てはまることです。さらに重要なのは、野菜や果物は収穫後も生きていることです。ですから、上述の各段階でのばらつきというのは実は2種類あり、それは10個(葉、本、玉)収穫したら10通りということと、収穫した時には同じでも流通や消費までの過程で個性が出てくるということです。

では、なぜその個性を知る必要があるかというと、商品の品質と価格が対応していないと生産者、流通業者、小売店、消費者が損をする場合があるからです。売り手としては、品質が期待以下であれば、書いてからクレームがつきます。また、より良いものを出しても高く売れなければ生産・卸し・販売の意欲が減退してしまいます。一方、買い手としては、同じ価格で品質が低いものを買わされると損をした気分になります。今後の十年で、おそらく商品の価格が個別に付けられ、個別に管理されるようになると考えています。そのような時代に必要な品質管理の方法を、一研究者として考案していきたいと思います。

おわりに

社会共創学部産業イノベーション学科ものづくりコースで学ぶ人は農学、工学、社会のことをどれも学びたいという意欲的な人が多いと感じます。農学部には農業工学が、工学部には生物工学といった分野があることが多いですが、それだけでなく、生産管理、市場調査などの企業活動の根幹や市場の原理では覆い隠されてしまうような大事なことも学びたい。そのような人と一緒に考えながら研究する時間を増やしていきたいと思います。