研究紹介

まちづくりの担い手育成、場のデザイン

  • 教員: 片岡 由香
  • 学科:
  • コース: 地域デザイン・防災コース
  • キーワード: 公共空間、担い手育成、場のデザイン

研究活動の背景と特色

 

多くの地方都市において、地域の存立を維持していく上で、いかにしてまちづくりを担う人材を育成するかが喫緊の課題となっており、様々な地域で自治体、NPO等の民間団体、大学等の教育機関によりまちづくりの担い手の育成を目指した「まちづくり学習」が実施されています。このような取り組みでは、まちづくり学習を通じて、まちへの関心や参加意識の醸成、まちづくりを進める上で必要な知識やスキルの習得、市民主体によるまちづくりの促進など様々な効果が期待されていますが、まちづくり学習の取り組みが実際のまちづくり事業と結び付いていないという問題も指摘されています。

このような背景のもと、2014年より、公民学連携で公共空間のデザインやまちづくり活動を実践している松山アーバンデザインセンターと連携して、まちづくりの担い手育成スクール「松山アーバンデザインスクール」の実施に取り組んできました。この取り組みは、地域社会との連携の下、まちづくり学習を実践すると共に、取り組みを現実のまちづくりへ活かすことを重視したプログラムとなっています。

研究では、実際の松山アーバンデザインスクールの活動を対象として、活動プロセスや参加者の意識などに着目し、従来の研究では十分に検討されてこなかったまちづくり学習の地域連携や現実のまちづくり活動への展開の可能性、人材育成のあり方を検討することに主眼を置いています。

研究活動の展望 ~地域社会とつながる場のデザイン~

アーバンデザインスクールの様子2

研究では、松山アーバンデザインスクールのプログラム(約1年)を、「企画・事前相談期」、「地元関係者・提案調整期」、「支援・協力依頼期」、「実践期」の大きく分けて4段階に分類することができ、地元関係者に企画内容を提案することや協力を求めるというプロセスを経ていることがプログラムの特徴であることを考察しました。また、本プログラムの受講生に着目した分析においては、プログラムの中でまちづくりの知識やスキルを習得するだけでなく、「まちづくりの担い手になってみる」という経験が得られる場を設計することが重要であることが示唆されました。研究で得られた知見は、今後まちづくりの担い手育成を実施しようとする担当者がその地域において求められる担い手像を育むためのプログラム設計に活かすことが期待されます。

メッセージ

アーバンデザインスクールの様子3

「まちづくりの担い手育成」のプログラムは全国で実施されており、より効果的で参加者や関わる地域の方々皆が楽しく面白い方法を検討していくことが重要です。今後も実際の取り組みを参与観察しつつ、自律的かつ持続的な活動を展開する担い手の育成について研究していきたいと思います。

参考: 

・片岡由香,羽鳥剛史,羽藤英二:まちづくり実践学習のプログラム化と地域連携への展開可能性に関する研究,土木学会論文集D3(土木計画学),vol.72,No.5,pp.I_523-I_532,2016.

・小川 直史, 羽鳥 剛史, 片岡 由香, 尾﨑 信:まちづくり人材育成プログラムにおける学習経験と担い手像の形成に関する研究―松山アーバンデザインスクールの試み―,土木学会論文集D3(土木計画学)Vol.76,No.5,pp.I_569-I_588,2021.