報告書
愛媛大学の「マルチスピーシーズ・キャンパス」の取り組み(社会共創学部・教育学部・国際連携推進機構・SDGs推進室のコラボ)では、2022年から大学キャンパスを舞台として、自然を通じて多様な生き物が共生できる場として教育、研究、地域に幅広く貢献できるように取り組んでいます。今年度は、城北キャンパスから樽味キャンパスへ活動が拡大し、新たに農学部と協力できるようになり、引き続き他大学への見学や継続してきた活動の研究発表や大型研究プロジェクトの調査対象となったことが主な成果となりました。
城北キャンパスでは、社会共創学部本館南の実験サイトを、SDGs推進室の学生団体「だいだい」の畑活動以外に、環境デザイン学科や産業イノベーション学科のプロジェクト演習で活用しました。電気を使わず雨水タンクを利用したブルーベリー灌水や環境測定の実験を行い、「愛媛県南部におけるふごの利用文化の概観とその製作方法」の稲栽培の場所となりました(図1)。昨年度開始したビオトープ作成では、さまざまな生き物が来た一方、夏の間の雨不足で、温暖化が進んだ未来はどうなるのか実感できました(図2)。ボウフラが発生した時、教育学部の協力で教育学部南の池からメダカをいただき対応できました。そして、樽味キャンパスのユーカリ会館裏の空間の活用が、SDGs推進室を通じて話題としてあがった時、小さく始まったビオトープづくりで身につけた知識やスキルを試せるきっかけとなり、大学院生・留学生・農場の力を借りながら緩やかな斜面で多様な生き物が住める「エコトーン」づくりに取り組みました。今後も池に限らずこちらの空間活用を考えていきます。

図1 実験サイトで育った豊満神社米、コヤマジフク、モチミノリ が「ふご」になる

図2 睡蓮鉢がさまざまな動植物の居場所となった(メダカもどこかにいるはず)
大学外での活動として、秋に北海道の東部を訪問し、東京農業大学のオホーツクキャンパス(図3)をはじめ、知床のビジターセンターや北方民族博物館などで、人と自然や観光の関係に関する環境をわかりやすく伝え、興味を持っていただくための展示の調査を行いました。その学びは今後、愛大のマルチスピーシーズ・キャンパスの環境教育活動の参考にしていきたいと考えています。

図3 キャンパスと周辺がトレールとなる東京農業大学オホーツクキャンパス
研究成果に関して、今年度長年の活動の結果として論文が2件出版されました。文字通りマルチスピーシーズ・キャンパスのルーツにあるエディブル・キャンパス活動の一環で行ってきた、循環型畑づくりに関する社会共創学部紀要の論文では、「循環型畑づくりの実践は、専門性や立場を超えた協働を生み出し、学際・超学際を促すバウンダリー・オブジェクトとして機能しうることを示した」ことを結論としています(1)。また、学生・教職員・ステークホルダーで行ったワークショップのもとで、ランドスケープ・デザイナーと作成した新たなキャンパス・デザイン・ビジョンは国際学術誌「Cities And The Environment」で採択され、愛媛大学から世界中で活発化している大学内環境改善に関する議論への貢献となりました(2)。そして、マルチスピーシーズ・キャンパスの仕組みそのものが、大学外でも注目を集め続けています。令和6年度から開始となる「多元世界プロジェクト」(総合地球環境学研究所)では制度、価値、世界観の探究を通じた多元世界的土地利用の探求に取り組む中、愛媛大学のマルチスピーシーズ・キャンパスがケーススタディの一つとして調査対象となりました。
マルチスピーシーズ・キャンパス・チーム
(環境デザイン学科・産業イノベーション学科・地域資源マネジメント学科・愛媛大学SDGs学生推進室「だいだい」の学生、教員:ルプレヒト・小長谷・竹島・徳岡・島上・笠松・高橋・ヒディング・向・竹下)
(1) 島上宗子, 甲斐貴光, 笠松浩樹, ルプレヒトクリストフ, 竹島久美子 (2025). マルチスピーシーズ・キャンパスに向けた循環型畑づくり-土壌分析からみた有機資源活用の可能性と課題- . 愛媛大学社会共創学部紀要 9(2), 5-15.
(2) Yoshida, Aoi & Rupprecht, Christoph D. D. (2025) Multispecies Edible Landscape Design: A Rewilding-Inspired Sustainable Campus Vision for Ehime University, Japan. Cities And The Environment 18 (1), 5.
代表者:ルプレヒト・クリストフ(環境デザイン学科)

