研究紹介

ゲーミングシミュレーションを用いた学習教材の開発と教育効果の測定

  • 教員: 尾花 忠夫
  • 学科:
  • キーワード: ゲーミングシミュレーション、意思決定ゲーム、学習教材の開発

はじめに

経営学、会計学といった学問は、企業が経営を行うための幅広い理論を学ぶことはできても、座学による講義だけでは、理論を暗記するだけで、それらが現実社会においてどのように活用されているのかという考えには至らない人が多いのが現状です。そこで、これらの学問に対して、様々な理論がどのように適用されるのかを能動的に学んでもらうための学習教材を開発出来ないかというのが、私の研究テーマの1つです。具体的には、可能な限り現実に即した架空の経営環境を設定し、その経営環境の中でプレイヤーに様々な意思決定の疑似体験を通して、学習してもらうというものです。これをゲーミングシミュレーションと言います。ここでは、その一例として以前に開発したゲームを紹介します。

コロナ禍における飲食店の意思決定を体験するゲームの紹介

今もなお、衰えを見せない新型コロナウイルス(Covid-19)ですが、日本においては既に4度にわたる緊急事態宣言を経験しました。その結果、私たちの生活環境が大きく変容するという事態に陥りました。様々な方面に大きな影響を与えた緊急事態宣言ですが、中でも大打撃を受けた例として飲食店が挙げられます。度重なる緊急事態宣言の中で営業自粛の要請がなされ、経営状況がひっ迫し、破綻してしまった飲食店も多数あります。

それでは、コロナ禍における飲食店の意思決定はどのように行われれば良かったのでしょうか。こうしたことを体験するゲームを制作しています。各プレイヤーには、異なる店舗のパラメータが与えられ、そのパラメータをもとに自身の店舗を維持する(倒産させない)ための意思決定を行います。この意思決定には、管理会計の基本的な考え方でもある、損益分岐点分析(CVP分析)の考え方が必要です。CVP分析を行うことで自店の利益がマイナスにならないような意思決定を行う必要があるからです。

また、自店の利益だけを優先してしまうと、コロナウイルスによる蔓延を促進しかねないという問題があります。さらに、このゲームは1人のプレイヤーではなく、複数のプレイヤーで同時に意思決定を行うため、他店の営業状況によっては、自店の売上にも影響が出ますし、街全体のコロナ感染リスクに影響を与えてしまい、さらに営業を行いにくくなるという状況に陥ります。プレイヤーは様々な要因を考慮しながら、意思決定を進めていきます。

まとめと今後の展開

今回紹介したゲームは、かなり限定されてはいるものの、現実に似せた架空の世界を題材にしています。プレイヤーは、この架空の世界の中で、様々な要因を考慮しながら意思決定を行う必要があります。今回は、学生の皆さんなら誰もが耳にしたことがあると思われるCVP分析を例に挙げました。しかし、このゲームには他にも様々な理論を学ぶための仕掛けがあります。こうしたゲームを体験することにより、学生の能動的な学習を促そうとするのが、ゲーミングシミュレーションであり、そうしたゲームの開発が私の研究です。

こうしたゲームはただプレイするだけでは何の役にも立ちません。ゲームをプレイしたプレイヤーがどのような学習効果を得たのか、ゲームをプレイする中で何を学んだのかが重要になります。今後は、ゲームの開発だけではなく、こうした学習効果をどのように測定するのかについても検討していく必要があります。