研究紹介

レストラン情報サービスの比較分析

  • 教員: 崔 英靖
  • 学科:
  • キーワード: 情報の働き、外部資源の活用、情報サービス、ビジネスモデル、入力負担

情報と組織の観点からの経営

多くの製品やサービスは存在することが「当たり前」だと思われがちですが、それはかつての「当たり前」が何らかの形で作り替えられたり、置き換えられたりしたものであり、その背景にはロジックや機能が存在しています。情報通信技術の発達と普及は私たちの現在の生活の前提となっているため、現在の「当たり前」の背景を「情報の働き」と「外部資源の活用」という観点から分析・考察することが私自身の現在の専門と言えます。

この観点からさまざまな経営手法やサービスなどを分析してきましたが、ここでは皆さんの生活の身近な存在であるレストラン情報サービス、いわゆるグルメサイトの分析・考察について紹介しましょう。

レストラン情報サービスとインターネットの普及

私たちは特定のレストラン(飲食店)を利用するかどうかを、自分自身の過去の経験や誰かからの紹介などの何らかのレストラン情報に基づいて決定します。このレストラン情報の提供・獲得はレストランにとっては売上に、消費者にとっては満足度に影響するので、レストラン情報を提供するレストラン情報サービスが有料でも成り立つ可能性があります。

インターネット普及以前は、主にマスメディアや雑誌メディアがこのレストラン情報サービスを担っていました。その際の主たる機能はレストランからの情報収集(レストラン情報の入力)と消費者への情報提供で、レストランからは広告宣伝費として、消費者からはコンテンツ代金として収益を上げることになります。インターネットの登場後、同じ機能を自身のウェブサイトで提供するレストランが登場するようになり、さらにはインターネット上でこれらの機能を提供する事業者(いわゆるグルメサイト)も現れました。では、これらで提供されるレストラン情報はその提供者自身が入力しているのでしょうか?

レストラン情報サービスのビジネスモデル分類

インターネットを利用すればレストラン自身が情報入力と情報提供を行うことも可能ですが、レストラン自身にそのための経営資源がない場合、サービスの購入という形で外部資源を活用することになります。レストラン情報は消費者側も有料で購入する可能性があるため、「レストラン情報」を「ネットで提供する」ビジネスモデルでは2種類の顧客が成り立ち、さらに多くの消費者がサイトにアクセスするようになると、そこに広告主という別の顧客も対象にすることが可能です。

このビジネスモデルが成り立つためにはレストラン情報の獲得(入力)が必要です。そこで情報の入力者に着目して、レストラン情報サービスをCA型(Classified Ads)、GB型 (Guide Book)、CGM型(Consumer Generated Media)の三種類に分類しました。レストラン情報の獲得(入力)には時間や労力などのコスト(入力負担)が発生し、この入力負担は情報の品質や更新頻度などにも影響されます。ビジネスプランの構成者(プレイヤー)はレストラン情報サービスの利用によって得られる効用と負担する入力負担や料金を考慮した上で、サービスを利用するかどうかを判断しており、その結果がレストラン情報サービスのシェアや業績となっていると考えられます。
実際、誰がどの観点でレストラン情報を入力するかは、そのレストラン情報サービスの性質に大きく影響しており、各レストラン情報サービスの利用者および利用情報の違いにも繋がっています。

「当たり前」の裏側を考える

今回紹介したのはレストラン情報サービスの構造とその背景でしたが、これまでに電子商取引(eコマース)や位置情報の活用、キャッシュレスの普及なども研究対象としてきました。

どれも当時の「当たり前」をそのまま受け入れるのではなく、「当たり前」の裏側を知って、より良い現実につながる提案をすることが目的です。そのためにインタビューやアンケート等の実態調査も行いますが、研究の根本にあるのは「情報の働き」と「外部資源の活用」という観点で現実を抽象化して考えることです。