研究紹介

農産物ネット販売による地域ブランディングの可能性

背景

現在、インターネットの普及に伴い、農産物ネット販売の市場規模やその推移は明確ではありませんが、図1に示す食料品を含むBtoCネット販売に比べて市場規模は低いものの、年々増加し続けています。2008年から2020年にかけて、日本全体のBtoC-EC市場規模は60,890億円から192,779億円に増加し、EC化率は1.79%から8.08%に増加しました。同期間に、食料品小売業のBtoC-EC市場規模は2,930億円から22,086億円に拡大、EC化率は0.48%から3.31%へと、年々増えつつあります。

図1 日本のBtoC-EC市場規模と食料品小売業EC市場規模の推移(2008年~2020年)

出所:経済産業省電子商取引実態調査(2008年~2020年)より作成

研究内容

農産物のネット販売を行っている主体は多岐にわたりますが、特に生産者による産直ネット販売は消費者とのコミュニケーションを最大限に活かせると言えます。産直ネット販売では、インターネットを通じて消費者に対し、地域の魅力や地産の農産物に関する情報など多様な情報を提供することができます。単に農産物を販売するだけでなく、消費者の関心を産地に向けさせることや、商品に関連する社会的な活動を伝えることにより、消費者との信頼関係を築き、農業や農村への理解者を増やし、最終的には消費者との価値観を共有することも可能です。

私の研究は、農産物ネット販売による地域ブランディングのモデルを構築し、有効なマーケティング手法を検証してみることです。日本と中国のネットワークを応用して、消費者に共感を持ってもらえる価値観を伝える試みを行います。

写真1 農産物ネット販売用の倉庫(中国)

メッセージ

皆さんは未来のリーダーとして、農産物ネット販売の成長と地域ブランディングの向上に貢献することができます。消費者と生産者の絆を深め、地域の魅力を世界に発信する力を持っています。

是非、この成長産業に興味を持ち、地域ブランディングの重要性を理解してください。自らのアイデアや発想を活かして、新しい価値を創造しましょう。皆さんの力が、持続可能な農業と地域社会の発展に大きく寄与することを期待しています。

 

参考文献

経済産業省「電子商取引実態調査」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/(2023年7月10日閲覧)

樊帆(2015)「農家連携による農産物ネット販売の特徴と課題」『食農資源経済論集』66卷2号,pp.15-25.