研究紹介

地域ブランドの研究―ワイン産業を事例として―

マーケティングと地域ブランド

私の専攻はマーケティング論です。マーケティングとは簡単にいえば、製品やサービスが売れる仕組みをつくることです。典型的にはターゲット顧客を見出し、その顧客のニーズを十分に踏まえた魅力的な製品を企画し、適切な価格をつけ、流通業者を通すにせよ自前にせよ販路を構築し、さらにテレビやネットなど各種メディアを通じて効果的に広告宣伝する、といった一連の内容を含みます。
こうしたマーケティングの考え方や技法は、もともと製造業を中心とする大企業で発展してきましたが、今日では病院や学校などの非営利組織、さらに地域の特産品や観光地における需要拡大・活性化策としても重視され、実践されるようになっています。
私の研究の主要な関心は、マーケティングの地域への応用と発展にあります。とりわけここ10年来、マーケティングや地域活性化などの実務および研究領域において、地域ブランドが盛んに議論されており、私自身その研究に携わっています。

地域ブランドの事例としてのワイン産業

ところで一口に地域ブランドといっても、農水産物のような地域特産品、温泉や史跡のような観光資源、あるいは地域それ自体というように、その研究対象は様々ですが、私は近年ワインに着目し、日本および海外のワイン産業において地域ブランド戦略がどのように展開されているのかという実態を究明することを通じて、地域ブランド研究の発展に資することを目指しています。
ご想像のとおり、日本ではマーケティング論や地域活性化論の立場からワインやワイナリーを分析した研究成果はきわめて少ないです。とはいえワインは本来、その地域に根差した特産品としてワイナリーやその原料ぶどうの栽培農家を潤すのみならず、飲食や宿泊、観光関連まで含めたすそ野が広い産業として、地域全体の活性化につなげることも期待しうるものです。それゆえワインの地域ブランド構築に向けた取り組みや、その形成過程と条件について究明することは、たんにワイン産業の実態把握ということではなく、地域ブランド論さらにいえば近年その重要性が指摘される6次産業化や農商工連携などに対しても理論的・実践的な示唆を与えると考えます。
こうした成功事例はフランスやアメリカなどのワインの銘醸地にみられますが、近年日本でも例えば山梨県や長野県、北海道などにおいて端緒的な取り組みが散見されます。そこで、そうした産地においてツーリズムなど関連分野も含めたワインの地域ブランドがいかに構築されているか、あるいは構築されるために解決すべき課題は何かということを明らかにするとともに、そこから発展して地域それ自体のブランド構築までいかに結び付けていくかという点について、国内外のワイナリーや自治体、関連団体におけるフィールドワークや先行研究の整理検討を通じて調査しています。

マーケティングの魅力

学生のみなさんにとって、マーケティングの考え方や知識は、製造業・サービス業を問わず将来企業に就職した際に日々の仕事で活かせますし、また公務員の道に進む場合にも、例えば住民に満足してもらえる行政サービスのあり方を考えたり、地域の魅力を発信してそのブランド力を高めていく方法などを考えるうえで役立つでしょう。身近な製品やサービスを素材に、その売れる仕組みについてみなさんと楽しく勉強できればと思います。