研究紹介

数理と情報技術による経済研究

  • 教員: 川口 和仁
  • 学科:
  • キーワード: モデリング、データマイニング、アプリ開発、最適化

研究の概要

西条栄光教会の調査

私の研究テーマは、学問分野の枠に囚われず、数学、情報技術、フィールド研究などの知を柔軟に活用して経済問題にアプローチする新たな視点、方法を考え出すことです。これまでフォンノイマン経済成長モデルの解釈、経済成長論へのカオス理論の応用、粘性解手法による成長モデルの最適解の分析、空間経済モデルによる地域ブランド戦略の分析、インタビュー調査に基づく地域経済や日本型雇用のモデル分析などの研究を行ってきました。現在は、主に地域をアピールするスマホアプリやHPの開発、日本の企業や大学が理想とする人材像のテキストマイニング技術による分析、人工知能技術を活用した広告戦略という三つの課題を主なテーマとしています。今も昔も大学生は、経済の重要な変化をいち早くキャッチしてくれる存在だと考えており、学生たちが提起する課題に対して様々なアプローチ手法を教えながら共に解決に取り組んでいます。

 

 

研究の特色

スマホアプリ起動画面

私の研究生活は、経済成長のカオスモデルの数値計算から始まりました。当時、コンピューター技術は数値データを直接扱わない研究分野には無縁と考えられていましたが、21世紀に入り、AI技術などの飛躍的進歩によって文献学、哲学などの文系分野でもICT技術が大きな役割を果たすようになりました。

昨年度は、学生からの提案で愛媛県西条市の現地調査に赴き、国の有形文化財として登録される見通しとなった西条栄光教会、名水百選に選ばれているうちぬきの水などを取材しました。取材後、西条市役所職員の方々から特産品や景勝地の写真を多数ご提供いただき、スマホクイズアプリ「翔んでも☆西条市」を開発してGoogle Playに登録しました。アプリは今年度中にiPhone用にも移植する予定です。このようにフィールドワークで得られた知見に基づいてICT技術を活かした成果を生み出し、公表することが当研究室の基本的な研究スタイルとなっています。

また、テキストマイニング技術を活用して企業の求める人材像と大学のディプロマ・ポリシーとの関係を分析した研究「必見!理想の人材像作成を目指して」は、学生たちが第66回日本学生経済ゼミナール全国大会プレゼン部門で報告し、労働問題③分野第3位の評価をいただきました。現在は、より内容を拡充した研究結果を論文の形にまとめているところです。

最後に、企業の広告データのテキストマイニングによる研究は現在進行中で、人間には考えつかないような魅力的な広告を、人工知能に考えさせる方法についてアイディアを練っているところです。このように当研究室では、どのような課題に対しても、常に新しい技術を取り入れた今までにないアプローチを模索しています。

 

研究の魅力

テキストマイニングのワードクラウド

数学の関数解析論から地域の高齢者や労働者へのヒアリングまで、教科書的な学問の枠を取り払って利用可能な知見や情報をすべてデータとして活用し、経済現象の本質に迫り、課題解決に活かしていくことのできる自由さが当研究室の魅力ではないかと思います。モデル分析とデータ処理が大きな柱ですが、新しい問題を立て、その解決方法を幅広く探り、ゼロから構築していく研究スタイルを今後も継続していけたらと考えています。これまでも多くの方々からのご協力を得て研究を続けてきましたので、引き続き研究現場での偶然の出会いを大切にしたいと考えています。

 

今後の展望 

近年は、機械学習や言語処理の分野で大きな技術革新が起こり、このイノベーションの波を取り入れた研究にしばらく取り組んでいきたいと考えています。現実の経済とかけ離れた技術一辺倒の研究となっては面白くないので、フットワークの軽い学生たちの情報察知能力、情報発信能力を活かし、彼らが提案してくる様々な難問に安易に手を出して、そこから生まれてくるアイディアを成果物としてまとめ、形にしていく予定です。また、これまで行ってきたアプリや経済モデルの開発も継続していきます。